TL;DR
Coinbase のトークン化株式は約 $750 万。Ondo の 130 分の 1、bStocks の 120 分の 1 で、規模では話題になりません。
同時に、トークンが本当に DeFi に入った唯一の発行体です。Uniswap と Aerodrome で取引でき、Aave の担保になり、Morpho で借入の裏付けになります。
そして「プールに入れる、担保に使える」こそ、トークン化株式が通常の証券口座に対して持つ唯一の差別化要素です。 取引所で売買して保有するだけのトークンに、証券口座に対する優位はありません。むしろ発行体の信用リスクと償還制限が上乗せされるだけです。
判断としては、「この分野はなぜ存在すべきか」という問いに対し、Coinbase の $750 万は他社の数億ドルより説得力があります。ただし規模が小さすぎて、このモデルが負荷に耐えるかは示せていません。
構造:直接証券、Alpaca が保管
- トークン:B20 シリーズ
- 原資産:Alpaca が 1:1 で保有
- 規制:ADGM
- チェーン:Base
- 規模:約 $750 万(2026-10-16)
- 米国居住者:不可
ラッパーは直接証券であり、SEC「トークン化証券に関する声明」(2026-01-30)の四分類では、xStocks や bStocks のトラッカー証券、Ondo の発行体請求権より前方に位置します。
ただし抑制が必要です。「直接証券」は分類であって保証ではありません。 本商品の償還条件、準備金証明の仕組み、議決権と配当の扱いは確認できていません。Dinari の稿と同じく、それらが埋まるまで、分類の前方性は評価の高さを意味しません。
13 契約、流通は 4 銘柄
2026-08-24 に四銘柄が先行開始しました。NVDAc、METAc、AAPLc、GOOGLc。
展開されたのは 13 契約で、流通量があるのはこの 4 銘柄のみです。
これは分野全体で「展開数 ≠ 流通銘柄数」を最も明快に示す例です。Dinari の稿では 724 という数字がこの二つを区別できないと指摘しましたが、Coinbase は明確な比率を示しています。13 : 4、約 31%。
どの発行体の銘柄数も、この割引率を念頭に読むべきです。 xStocks の 714 と 100+、Ondo の 395+ と 100+ の併存も、ほぼ同じ理由でしょう。
もう一つ基準の矛盾を明示します。ある資料は「10 銘柄が稼働」、別の資料は「13 契約、うち 4 銘柄に流通」としています。両者は整合できず、発行体自身の開示を優先すべきです。
真に DeFi ネイティブな唯一の発行体
本稿の核心です。
Base 上で Coinbase のトークンは:
- Uniswap と Aerodrome で取引でき
- Aave の担保として利用でき
- Morpho で借入の裏付けになり
- トークン化株式専用の Chainlink オラクルで価格付けされます
他社の流動性の形と比べると:
| 発行体 | 規模 | 流動性の所在 |
|---|---|---|
| Ondo | $984M | RFQ + mint/redeem、DEX プールには入らない |
| bStocks | $914M | Binance の板、BSC 単一 |
| xStocks | $847M | CEX の板 + Solana の DEX |
| Coinbase | $7.5M | Uniswap / Aerodrome / Aave / Morpho |
xStocks は Solana で実体ある DEX の厚みを持ち(NVDA は 30 日で $37.7M)、その点は当該稿で評価しました。しかし**「取引できる」と「担保として受け入れられる」は別**であり、後者こそがコンポーザビリティの実体です。
レンディングプロトコルに担保として受け入れられたのは Coinbase のトークンだけです。
これが意味するのは、NVDAc の経済的エクスポージャーを保有したまま、それを担保にステーブルコインを借り、別の用途に回せるということ。証券口座が決して提供できないものであり、この分野が存在する唯一の筋の通った理由です。
しかし $750 万ではストレステストになっていない
公平に述べます。
この規模では:
- Aave / Morpho の担保枠はごく小さいはず — 清算の厚み、オラクル遅延、急変時の不良債権リスクは、この規模では表面化しません
- 原市場が休場中の清算は未解決 — 米国株は週末休場、オンチェーン清算は 24/7。土曜に NVDAc が清算される場合、清算価格はどこから来るのか、専用 Chainlink オラクルは休場中どう振る舞うのか。最も知りたい点ですが、資料に答えがありません
- DEX の厚みが不明 — Coinbase トークンのプール深度や出来高の数値は資料にありません
したがって正確には、Coinbase は技術的に成立することを示したが、規模で成立することは示していない、というべきです。
企業財務:Robinhood の鏡像
| 指標 | COIN(FY2026 Q2) | HOOD(FY2026 Q2) |
|---|---|---|
| 売上 | $1,220M | $1,308M |
| 純利益 | −$359M | +$561M |
| 営業利益率 | −9.3% | 53.3% |
| 希薄化 EPS | −$1.36 | $0.62 |
Coinbase は直近三四半期のうち二期が GAAP 赤字でした。
ただし Robinhood の稿と同じ結論が当てはまります。これはトークン化株式事業と因果関係がありません。 四半期売上 $12.2 億に対し $750 万の規模は影響を持ちません。COIN の赤字でトークン化株式の不振を論じることも、HOOD の黒字でその好調を論じることもできません。
両社に共通するのは、資金もライセンスもあり、投資はほぼゼロという点です。注視すべきは、どちらかが主要アプリの導線を接続する時であり、その日に勢力図は書き換わります。
Base と Robinhood Chain の決定的な違い
両社とも自社チェーンで発行していますが、性質は異なります。
- Robinhood Chain:閉じており、トークンは自社アプリ圏内でのみ循環
- Base:開かれた L2 で、Uniswap、Aerodrome、Aave、Morpho が既に存在
この違いが、Coinbase の $750 万が Robinhood の $151M よりコンポーザビリティの面で意味を持つ理由です。 垂直統合自体は優位ではなく、既存の生態系に資産を置くことが優位なのです。
リスクと未知
| 項目 | 程度 | 内容 |
|---|---|---|
| 規模が小さすぎる | 高 | $750 万では負荷下でのモデル成立を示せない |
| 休場中の清算 | 高 | オンチェーン清算は 24/7、価格source が未文書化 |
| 償還条件が未確認 | 中 | 償還可否・KYC・最低額・所要日数いずれも未検証 |
| 準備金証明なし | 中 | Alpaca が 1:1 で保有するが公開 PoR はなし |
| 権利の扱いが未確認 | 中 | 直接証券なら配当・議決権が残るはずだが明示なし |
| 米国居住者は不可 | 中 | 同業他社と同様 |
| 銘柄数の矛盾 | 低 | 「10 銘柄稼働」と「13 契約/4 銘柄流通」が整合しない |
注視する点
- Aave / Morpho における実際の担保規模と清算履歴 — モデルが圧力に耐える唯一の実証
- 休場中の清算ルール — 週末の価格付けか清算停止か。担保として真剣に扱えるかを決める
- 流通が 4 銘柄からどこまで広がるか — 残り 9 契約の稼働時期
- 主要アプリの導線が接続されるか — Robinhood と同じく、桁が変わる分岐点
- TSV ライセンスを申請するか — 直接証券構造なら「権利同一」を満たしやすいはず
結論。 規模で見れば、Coinbase はこの表でほぼ無視できる存在です。しかし「この分野はなぜ存在すべきか」という問いでは、まともな答えを出している唯一の発行体です。 トークン化株式の価値は 24/7 取引ではなく(それは無期限先物のほうが優れ、規模もはるかに大きい)、担保として DeFi のバランスシートに入れることにあります。
Coinbase は技術を証明し、規模は証明していません。 他社ははるかに大きいものの、そのトークンは取引所口座と保管残高に滞留しています。それは証券口座との差が、上乗せされた発行体の信用リスクだけ、という状態です。
数値は 2026-10-16(規模)および 2026-09-04(企業財務・銘柄内訳)時点。COIN / HOOD は FY2026 Q2 基準。整合しない二つの銘柄数は本文中に明示しています。本稿は調査であり投資助言ではありません。